生まれて初めてこんな痛みを経験しました。
呼吸することがこんなに苦しく、シンドイなんて知りませんでした。
【 右肋軟骨(みぎろくなんこつ)骨折 】
医者も感心するほど見事にスッパリと折れています。
大変なのはここからでした。
「どの位で骨がくっ付くんですか?]
「若いから3週間もすれば大丈夫でしょう。」と言われ
1日中飽きる程《いりこ》を食べまくり《牛乳》を飲みまくりました。
案の定、3日後にはゴルフの虫がウズウズ動き出し、ボールを打ちたくて、
自分を押さえるのに必死の状態でした。 と言うのも、
実は骨折の1週間後に、連載のための「取材ラウンドレッスン」があったのです。
医者は骨が付くまで3週間と言ってましたがそんなに待てません。
今、自分に課せられた事は、1週間で骨をくっつけ、
何が何でも1週間後にフルショットをしなくてはならないのです。
それまでは絶対に骨に負担をかけない様にして、意地でも骨をくっつけて見せるっ! !
そのための毎日の行事は、折れている骨の上に両手を当て
【骨よ、くっつけぇ〜! 目覚めよ俺の野生的治癒力っ! !】と、
朝・昼・晩にお経の様に唱え、目の前に山の様に積み上げた《いりこ》を
必死に食べまくり、《牛乳》を飲みまくる毎日。
ウズウズと騒ぐゴルフ虫を押さえつけ・・・4日・・・5日・・・
そしてラウンドレッスン前日、覚悟を決め必死の想いで病院へ・・・。
「センセイ、明日ゴルフをしても良いでしょうかっ! !」と喰いつく。
私の形相に驚いたのか、ドクターは目を見開き後ずさり、机に背中を (ドン) と付けた。
「駄目ですか・・!? 駄目でもやらなきゃいけないんですっ! !」
「・・いや・・・そう言われても・・・」と、ドクター。
「何とかして下さいっ! ! お願いしますっ! ! 」
必死に頭を下げる私を見て、冷静さを取り戻したのか冷たくひと言。
「良いですよ! 痛いのは私じゃ無いですから、お好きなだけどうぞ!」
《 ムッ! ! 》と、しながらも「骨はまだくっ付いてないですよねえ・・・」と、
愛想笑いの私。
「付いてるはずですよ、貴方がスーパーマンなら」と、カルテを見ながら。
《 宇宙まで飛ばしたろかっ、このヤブ医者っ!》と、思いつつもにこやかに、
「あいにくスーパーマンじゃないもんで・・・痛み止めを出していただけます?」
「良いですよ、強烈な錠剤と、もっと強烈な座薬を出しておきますので、
思う存分ゴルフをしてきて下さい。」と、ニコニコ顔の医者。
横にいた看護婦のおばちゃんが
「センセイの大好きな手術が出来るかも知れませんね。」と、顔を見合わせる。
診察室を出ようとする私に、
「そうだっ、ゴルフの時サラシを巻いて補助バンドで締めておいた方が良いかな!」
怒りを抑えながら『そんな物持ってませんっ!』
「あっそう! じゃあ出しとこうね!」と、にこやかに響く声。
「おだいじに!」と、看護婦も。
ムカムカ、イライラ、カッカしながらも明日の為にクラブを磨き、
準備を整えていた私は楽しくて仕方ありませんでした。
「スイング中に骨折(3) 」 完。